訓蒙窮理図解(Kunmoukyurizukai)


知の食卓77号 2002.5.9
      



   Kumoukyurizukai is first physics textbook in Meiji Era in 1868. This textbook was written by Yukichi Fukuzawal He is famous for establishing Keio University. It is thought that it was easy to understand the physics principle and it was useful for students.

訓蒙窮理図解は、明治初年(1868)に福沢諭吉が書いた自然科学の啓蒙書です。教科書としても使われていたようです。

 目次を見ますと、

第1章 温気の事
 万物熱すれば膨張れ冷れば収縮む
 有生無生温気の徳を蒙ざる者なし

第2章 空気の事
 空気は世界を擁して海の如く
 万物の内外気の満ざる所なし
と書いてあり、題名だけでなく章の要約までしてあります。とても分かりやすく工夫してあります。

 第1章の内容を見ますと
「第一には日輪なり日輪の温気は誰も知らざるものなしこれを集れば物を焼くべし、硝子にて天火を取るも外の訳にはあらず」 とあります。日光を虫メガネで集めている様子が挿し絵にあります。ただ、その虫メガネは、占い師のものです。光の筋まで描いてあり、今の中学校の内容です。  また、中心的な話題として 「万物熱を受くれば膨れ熱を失へば縮むたとい鉄の棒にてもこれを焼けばその長さ延ぶるものなり。液類、気の類はその膨るること殊に甚だし。かん徳利に酒を一杯いれてかんをすれば口より溢出づ。こは液類の熱気に由りてその容を増す証拠なり。・・・又麦わらをかまどに炊きてばちばち音のするは藁の節にこもりたる空気の膨れてわらを吹き破る音なり。火事のときに竹のはねるというのもこの理なり。昔々猿かに合戦に火鉢より栗の破裂せしとは何故ぞ。栗の皮にこもりたる空気に熱に膨張しその勢いにて皮を吹き破り猿の顔にかかりしことなるべし。」
というのがあります。これは、現在小学校の内容ですが、この当時としてはとても分かりやすい例をあげていると思います。現在の教科書では、水の膨張を示すのに三角フラスコにゴム栓をしたろうと差し込んで実験しているのがありますが、これは、まさにかん徳利と同じような形です。今の子は、猿蟹合戦の話は分からないかもしれませんが、伝えたいものです。

 この他に、熱の伝導の話が載せてあります。金属は熱を伝えやすく、木、綿などは熱を伝えにくい。だから、料理の道具は木でできているということが紹介されています。さらに、綿入れの着物が暖かいのは、綿が暖かいのではなく、綿が熱を外に逃がさないからだと説明しています。だから、蒸気船の火炊きの人は、夏でも毛織の襦袢を着ているし、火消しの人足もさしこという厚手の服を着ていると例をあげています。
 最後に温度計を紹介しています。ファーレンファイト(Fahrenheit)華氏です。1720年に出来た寒暖計で沸騰したら212度、氷が32度で、塩と氷で最低温度0度になると説明しています。
 福沢諭吉は物理こそが西洋流の合理的な考えの基本だとしています。だから、一般大衆が物理的な考えを知るようにこの本を書いたようです。
 今読んでも感心させられることが多い本です。引用文献も7冊きちんとあげられています。イギリスとアメリカの本でした。  


「まぐまぐ(電子書店)」http://www.mag2.comに掲載
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